サンコミックス/朝日ソノラマ
初版=昭和53年8月
何気なく拾った瀕死の子雀
「死んじまっても、運命だと思って怨むなよ。」
そんな言葉を掛けながら、しかし、男は何くれとなく世話を焼いていた。
ある朝、話し掛けるものがいる。
元気になった子雀がなんと喋っているではないか!!
「おまえ、あんまり人前ではしゃべるなよ。」
「うん、僕、他の人の前では、ちゅんちゅんジャッジャ普通のすずめだよ。」
何気ない会話が、テンポ良く中原中也の詩のように運ばれていく。
巧妙な雀の描写はあすなひろし特有のモノ。これぞ、あすな作品といった逸品です。
同時収録作品も、真の哀しみをどこか奥の方にしまいこみ、表面を明るく暮らしていこうとする人々の、なんともいえない胸を押さえつけられる様な、切ない作品ばかりです。
(harumam4374745さま)