(りぼんコミック、1969年8月号)
赤い夕陽の中、馬車が屋敷についた。つれてこられたのはビリー・タムタムという幼い孤児。引き取られたビリーと屋敷の娘リリーは会うなり仲良しになった。
幼いビリー・タムタムと母子のような情愛で結ばれつつやがて恋人にも似た思慕が育って行った。ビリー・タムタムは自分が大きくなったら結婚しようとリリーに約束する。一方、リリーは兼ねてからジョーという若者から求婚されていたがかたくなに拒んでいた。
あるとき姿をあらわしたジョーはそんなリリーを責め求婚するが、リリーの抵抗で失明してしまう。そのリリーも馬に乗って夕陽めざし駆出したが落馬して亡くなってしまう。
事情を知らずリリーの行方を尋ねるビリー・タムタムに、ジョーは「リリーは夕陽の沈む町に行ってしまった」と告げる。「そこに連れていってくれ」というビリー・タムタムの願いをジョーは聞き入れて、二人の旅が始まった−
−−14年後、
ジョーには老いの影が見え、ビリー・タムタムは立派な若者に成長していた。
ある日、通りかかった町でビリー・タムタムはリリーの馬が売られているのをみつける。その馬を買い、ついに夕陽の沈む町にたどり着いたと確信したビリーにジョーはついに真実を打ち明けなければならなかった。――
国籍、時代ともに架空の世界を舞台としたファンタジーで「サマー・フィールド」の系列に連なる作品といえる。
愛や夢、空想などが至上の存在となり、現実に打ち勝ってしまうことがあすな作品ではしばしば見られる。
(ポンピドーさん)