作品解説

「青い空を、白い雲がかけてった」について

あすなひろしの作品中、最もポピュラーで知名度も高い短編連作「青い空を白い雲がかけてった」は1976年から81年と足掛け6年にわたり計21編が掲載された。

掲載誌は週刊少年チャンピオンに19編、月刊少年チャンピオンに2編であり、単行本は少年チャンピオンコミックスのシリーズから1〜3の計3冊が出されたが、「源平じいさん」が唯一単行本未収録である。

ご存知の方も多いと思うが、当時の少年チャンピオンはまさに黄金期で、ブラックジャックとドカベンとふたりと五人と750ライダーが毎週同時に読めたという恐ろしい時期にあった。(忘れてた。「マカロニほうれん荘」!)その中で人気を博し、いまだこうやって皆さんの記憶にある漫画というのも稀有であり、作品の力強さをつくづくに感じる。

また、「青い空…」連載中に編集部の要望で「風と海とサブ」の連載が始まったため、本シリーズは結局完結していない。(先生は「最後まで描きたかったな、卒業まで」とおっしゃられていました)

主人公のツトム(とその両親、飼い猫のタマ)、幼馴染のヨシベエ、オールドミス(といったって30前だろうなあ)の夏子先生、貫禄のある番長がメインキャラクターである。シリーズを読みなおして、作品世界を通して感じるのは、

  • 扉画やクライマックスだけでなく、何ということもないコマで映画的かつ空気感を湛えた画、構図で描かれている(あすな節!)。
  • 出来の悪い子も、優等生も悪い子もみんな仲良し。(というか普通に付き合っている)グループ同士の断絶やいじめなど全く見当たらない。先生も「今の世の中皆いじめじゃないか。学校から会社から。俺はそんなもの描きたくなかった」とおっしゃられてました。
  • 内容・画ともに上品でセンスのいいギャグがちりばめられた中に、ツトム君の中学生なりの真摯で「大人の世界」を覗くようなやり取りが当時−今も−魅力的。
  • 既に20年以上前の作品であり、背景の町並み・建物や小道具は贅沢なものは見当たらず過ぎ去った「昭和」を感じさせる。

といったところでしょうか。やはりワン・アンド・オンリーの作品世界であり、作者であったように思います。

(たかはし@梅丘)

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「青い空を、白い雲がかけてった」作品リスト

タイトルまたはサブタイトル話数
(表記あるもの)
掲載誌掲載年・号単行本
青い空を、白い雲がかけてった週刊1976年36号1
風を見た日週刊1977年5・6号1
いつか見た遠い空週刊1977年7号1
あしたも晴れるか第4話週刊1977年33号1
八月のツトム第5話週刊1977年39号2
ぼくの心を風が吹く第6話週刊1978年5・6号1
日だまりの中で第7話週刊1978年7号1
春が見えた朝第8話週刊1978年18号2
いま青春の風の中第9話週刊1978年19号2
ぼくのオレンジ色第10話週刊1978年37号2
ビューティフルサンデー第11話週刊1978年39号2
きみの心に降る雪は第12話週刊1979年4・5号2
春を待ちながら第13話週刊1979年6号2
バーボンの香りの中で第14話週刊1979年10号3
さりげないあした第15話週刊1979年18号3
青葉繁れる第16話週刊1979年28号3
童話第17話週刊1979年38号3
十月のあした月刊1979年10月号3
青空にタッチ!第18話週刊1979年42号3
源平じいさん・・・第20話月刊1980年10月号未収録
あしたになれば第21話週刊1981年4・5号3
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